福祉・医療部会
検討結果報告
安心して暮らせる福祉・医療体制の整備
テーマに対する基本的認識
我が国の65才以上の高齢者の人口比率は、2015年には25%を越え、4人に1人は高齢者となる予想である。一方、我が国の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子の数)は、現在1.38と人口の維持に必要な2.08を大きく下回っており、年々下降を続けている。これらを受けて、21世紀には、15才から64才の生産年齢人口は、減少を続け、高齢者との比率が現在の4対1から、2025年には2対1にまで縮小するものと見込まれ、年金、医療、介護等「福祉・医療」の将来に暗い影を投げかけている。
我々「福祉・医療」部会では、確実に訪れる少子・高齢化社会に向けて、市民と行政がいかに対処していくべきかについて提言を行なうものである。
2000年4月からスタートする介護保険の問題は、「福祉・医療」を考える上では、避けて通れない課題である。
医療体制の整備については、とりわけ医療機関の地域格差の是正を最大の課題として検討する必要がある。
また、障害者の社会参加の促進を図り、自立を支援するなど、障害者福祉の増進に努めなければならない。
一方、安心して子どもを産み、育てられる環境を地域全体で支える方策を推進することにより、児童福祉の増進や少子化の流れにも歯止めをかけられるものと期待するものである。
そして、いずれの課題も、逼迫する財政状況を踏まえ、行政施策には優先順位をつけて実施すべきであり、行政の役割と住民の役割を考え、市民の立場でできる事柄を検討すべきと考える。
意見交換で出された意見
1.介護保険の人的な体制(ホ-ムヘルパ-)
- 介護保険は、大切な問題である。高齢化社会を迎え、介護保険が来年の4月1日から実施されるが、保険料の額や公平な介護を本当に安心して受けられるのかが心配
- ホ-ムヘルパ-の具体的育成が重要
- ホ-ムヘルパ-が不足のせいか日曜日は休みの施設がある。市民意識にもっと配慮し、24時間対応できるようにすべきだと思う。
- 施設的な充実と相談苦情等の人的体制作りが必要。介護保険導入に伴う苦情多発が予想されるので、窓口は県だけでなく市の対策も必要ではないか。
2.介護保険がカバ-できない分野がある場合はボランティアで補う
- 介護保険に関する具体的なスケジュ-ルを総合計画に盛り込むこと。・現状として、流山市の介護は不十分である。介護保険実施後にもボランティアを組織し、不足分を埋め、介護保険料が高くなることを防ぐべきである。
- 低額所得者からの介護保険費の徴収をいかに考えるか。国民年金と同じく未納者の発生と、それらの世帯の援助方法が心配
3.高齢者に生き甲斐を持たせる対策
- 高齢者に『生き甲斐』を与えることが高齢化対策になる。ゲ-トボ-ルだけでなく、生きがいを持って活動できる場所の提供が重要である。
- 寝たきりにならないためにも生き甲斐を見つけ、高齢者が健康で助け合って行くことが出来たらと思う。1つ目には、日ごろの地域の助け合い。2つ目には、時間の余裕のある高齢者に介護技術等を覚えてもらい支援してもらってはどうか。
- 高齢者の施設が老人を囲い込むという発想で作られている。地域住民との交流や施設の開放が必要ではないか。
4.総合病院が必要
- 総合病院(市立病院等)の設置
診療科目のそろった総合病院を医療機関の地域格差を考慮して設置する必要がある。(普段の健康管理の為にも) - 赤ちゃんから高齢者まですぐに間に合う医療施設の確立
- 東部地域は、医療機関が極端に少ない。
地域格差の解消を図る。(診療所、医院(家庭医)、病院) - 小児専門の医者(医院)が欲しい。
- 福祉の充実には施設の整備が必要だが、市全体の平均的な考え方でなく、地域的格差を是正することが必要。総合的なものでなくてもブランチ的診療所的施設でも可(現状ではアンバランスである)
5.少子高齢化社会の到来
- 1人の女性が生涯に産む子どもの数が1.38人となった。本来2.08人産まないと人口は減少してしまう。何らかの少子化対策が必要ではないか。
- 65才以上の人口比は流山は低い(11.4%)が全国では17%もある。2015年には4人に1人は高齢者となる。年金、医療、介護をどうするかが重大な問題である。
6.地域で支える福祉
- 人の命を大切に考える行政の施策により、市民と市役所との信頼関係を強化し、流山に住んで良かったと実感できる政策を実行すべきである。
- 地域で支える福祉のまちづくりを行なう。これから高齢化社会を迎えて、どんなに各家庭で家族で頑張って支えたくても、とても無理な状況となるのが現実だ。
- 相互福祉の精神でボランティア活動を充実し、公共施設等の充実により、安心して生活できる制度の確立が必要と考える。
- 自立が重要。地域社会で助け合える(健康と生き甲斐)助けたり、助けられたりの関係を築く。
- 自立を助けてくれる環境づくりを行う。安全な道路や集会所の整備
7.障害者福祉対策
- 車イス、ベビ-カ-での移動が困難を解消するためバリアフリー化を推進する。
- 高齢者や障害者にとって住みやすいまちとなっているか。歩道、公共トイレ、市役所、公民館等の公共施設、駅などのバリアフリ-化を更に推進する必要がある。
- 障害者の社会参加の促進を図り、自立を支援できるような対策を一層講じることが必要
8.健康の維持増進(病気にならない対策)
- 散歩道(ウォ-キングロ-ド)の確保、健康を維持できる環境作り、公園整備等
9.保健センタ-の活用
- 保健センターの増設が望ましい。
- 保健センタ-の役割を見直す、現状は総花的である。
10.循環バス(医療福祉施設を利用するため)
- 車イス等の人も安心して医療福祉施設に通えるような福祉バスの運行を行なう。
- 現在循環バスが市街地を中心に1日2回通っているが、それを小型にして、巡回回数を多くすべきである。また、体が不自由な方も身近に利用できるよう停留所も増設する。
11.福祉に関する情報が少ない
- 福祉に対しては、本当に必要と思える人に対して行なわなければならない。
- 福祉に関する情報は、市の窓口に行かないとわからないケースが多いので、従来の「福祉のてびき」を更に具体的に説明する冊子に改め、全世帯に配布することにより、積極的に情報を提供すべきではないか。
- 行政は、福祉のスペシャリストを育ててもらいたい。
- 福祉の窓口の一本化が必要
- ボランティアの募集に関する情報発信を強化する。
- 行政から市民へのPRが必要
12.ボランティアセンタ-の充実
- ボランティアセンタ-は、日曜日、祝日が休みになっている。パ-トタイマ-の方に働いてもらって開館してはどうか。
盛り込むべき基本的な視点
- 介護保険が2000年4月から開始されるが、福祉の重大な施策であるため、項目として1つの柱を立ててはどうか。
- 介護保険の新設に鑑み、ホームヘルパー等の養成をより強化すべきである。
- 高齢者対策には「生きがい」が重要であるため、高齢者が生きがいをもって活動できる場の確保に力を入れてもらいたい。活動の場として「空き教室の活用」も取り入れることができれば、少子化・高齢化のいずれにも対応できるのではないか。
- 「保健医療福祉サービス体制の充実」には、医療機関の地域格差の是正を図るため、20年スパンで総合病院の設置を実現してもらいたい。また、保健センターの機能の充実を図られたい。
- 身近に医療機関が不足しているため、「社会サービス体制の確保と調整」には、市内循環バスによる医療福祉機関を循環する交通網の整備を取り入れてもらいたい。
- 「バリアフリーのまちづくり」の中では、障害者の社会参加の促進を図り、自立を支援できるような対策を講じてもらいたい。
- 「安心して子どもが健やかに生まれ育つ環境づくり」の中に少子化対策を積極的に取り入れてもらいたい。少子化対策は、後に続く人がよりよく生きられるような環境づくりをする上で重要であるため、民間活力の導入等を踏まえながら、計画の様々な分野において取り入れるべきである。
評価できる事柄
- 長期構想の素案における市民福祉の分野には、多少総花的ではあるが、全ての事柄が網羅されていると評価できる。ただ優先順位を付けていくべきではないか。
- 「健康で明るい暮らしづくり」の中で医療体制の整備を最初に挙げていることは評価できる。しかし、本市には、市民病院、総合病院がなく、医療機関の地域格差があるので、その是正に努めてもらいたい。
- 「安心して子どもが健やかに生まれ育つ環境づくり」では、少子化対策に取り組む姿勢を評価するが、更に多くの分野で積極的に少子化対策を進める必要がある。
市民の立場で実行できる事柄
- 介護保険でカバーできない部分を民間ボランティアが支援する。
- 介護教室等で介護の知識をつけ、地域で高齢者の介護を支援する。
- 介護で一番必要なのは力である。男性も介護の知識を身につけ、積極的に介護に参加していくべきである。
- 介護される側である被介護者の教育も必要である。介護以外の仕事をボランティアに押しつけるような被介護者もいるので、介護を受ける側のマナーも教育する必要がある。
- 介護保険が健全に運営できるよう、ボランティア等で介護を支えていく努力が必要である。
- 母子家庭、父子家庭の支援を地域で行い、児童の健全な育成を地域で見守る。
- 障害者の外出等の支援を地域のボランティアで行なう。
- 少子化対策が重要である。
少子化対策として子育てがしやすい、若い人が住みやすい環境を地域で作っていく。
地域の育児の経験者に気軽に相談できるような街をつくる。
子育てを終えた人がボランティアで子どものめんどうをみてはどうか。
まちづくりは人づくりである、地域で子どもを叱る感覚、地域で子どもを育てる対策を立てるべきである。
基本構想全体への意見
- 本当に福祉を必要としている人に福祉が行われる制度を目指してもらいたい。
介護保険がカバーしきれないケースが発生しても、独自施策や運用等で対応するなど暖かい行政を目指してもらいたい。 - いずれの施策も十分な情報公開が重要である。また、市民の側も行政から情報を得る努力をする必要がある。
- いずれの施策も重要ではあるが、優先順位をつけて20年スパンで計画的に実施してもらいたい。
- まちづくりは、人づくりである。少子化対策は、21世紀の流山をになう世代を育成する上で極めて重要であるため、計画の様々な分野において取り入れるべきである。
スケジュール
- 第1回ワ-クショップ
平成11年5月29日
場所:市役所
内容:長期構想の概要等、地域別・テーマ別グループ検討 - 第2回ワ-クショップ
平成11年6月5日
場所:市役所
内容:「福祉・医療」についてグループ討論 - 起草委員会
平成11年6月8日
場所:市役所
内容:「福祉・医療」の提言素案を検討 - 第3回ワ-クショップ
平成11年6月12日
場所:文化会館
内容:「福祉・医療」の提言素案を作成 - 第4回ワ-クショップ
平成11年6月27日
場所:初石公民館
内容:「福祉・医療」の提言を発表、代表者による討論会
検討者名簿(敬称略)
リーダー:中澤三郎
サブリーダー:藤田吉彦
メンバー:青木孝諭、内山忠男、大竹和子、上藤安松、河上喜一郎、黒田律子、小林茂、多榊原松子、渋谷和子、田中要、中落雄次、永元としえ、藤代千代子、山本雅造
運営委員:川向 徹、吉田洋一
事務局:櫻井範子、黒川律子
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