ぐるっと流山 生誕150年記念 第8回秋元洒汀展
杜のアトリエ黎明で8月18日まで
8月10日(土曜日)から8月18日(日曜日)まで、杜のアトリエ黎明で「第8回秋元洒汀展~行動する後援者(パトロン)~」が開催されています。杜のアトリエ黎明は、流山の宿(しゅく)と呼ばれた地域に位置します。宿は、明治から大正期における有数の事業家で、菱田春草ら多くの芸術家を支援し、自らも俳句・文学・写真等の芸術・文化活動に優れた才能を発揮した秋元洒汀のゆかりの地であり、「杜のアトリエ黎明」は、洒汀の長女である画家で歌人の秋元松子と、その夫である洋画家の笹岡了一が、戦後間もないころから、創作活動とともに後進の指導にあたった歴史的な場所です。
秋元洒汀は、家業である醸造業の傍ら、流鉄の創立発起人筆頭として、資金面を含めて鉄道開通に力を尽くし、また赤城神社に多くの寄進を行うなど、流山の発展に大きく尽くしました。また寺崎廣業、田山花袋、竹久夢二など、当代一流の文人墨客を流山の自宅に招き、赤城神社に詣で、句会等をたびたび催すなど、文雅の交わりを繰り広げました。
一方で洒汀は、少年期より文学への情熱を燃やし、明治時代に初めて個人句集「胡沙笛」を出版するなど、俳人・小説家として優れた才能を発揮、多数の作品を発表し続けました。さらに、文芸以外のさまざまな分野にも旺盛な探究心を発揮し、自転車や写真などの世界で趣味のレベルを超えた活動を展開します。
洒汀は、多くの芸術家へ慈愛溢れる支援を行ったことでも知られ、中でも、眼病に苦しんだ上若くして亡くなった天才日本画家・菱田春草に目をかけ、惜しみない援助を行いました。あまり知られていない事実ですが、ともに国指定重要文化財となっている春草の代表作「落葉」「黒き猫」などは、制作当時、秋元洒汀家の所蔵でした。
クスの巨木をはじめとする樹々に囲まれたアトリエの庭園には、明治40年頃、洒汀が、奈良東大寺三月堂の校倉を模して流山の宮大工に造らせたという、三角材の校木(あぜき)を井桁に組み上げた様式の通称「校倉(あぜくら)」があります。永年の風化により退色していますが、扉の内側は、京都の日本画家・三宅呉暁(みやけごぎょう)の手による梅と菊の華麗な絵で彩られています。
戦後、了一と松子は、旧母屋に隣接し宝物殿として使われていたこの建物を庭園内に移設しました。戦時中は、屋根のこけらは供出を余儀なくされ、風雪にさらされていましたが、昭和55年に改修、現在の形に整えられました。格調高い校倉の建築が、庭園の歴史の重みをさらに深く感じさせてくれます。
この夏の暑さにも、庭園を渡る風は心地よく感じられ、庭園に面したテラスやギャラリー内のテーブルでは、コーヒーや紅茶をはじめ、猛暑に嬉しいかき氷もいただくことができます。
家族が集まり、祖先を思い、昔を振り返ることの多い夏、洒汀を通じて、みりん醸造の隆成が支えた流山の文化・芸術の奥深さを感じ、流山の大いなる歴史の一面に触れるひとときを過ごしてみませんか。秋元松子の作品「からすうり」「惜春」「枯れ葉の詩」の複製3点も展示されています。会期は8月18日(日曜日)まで、時間は9時から17時までです。入場無料。お問い合せは杜のアトリエ黎明(電話:04-7150-5750)まで。
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