ぐるっと流山 後藤純男回顧展

ページ番号32983 更新日 平成29年2月3日

日本画の巨匠の名作を流山で

テープカットの写真

 平成29年2月21日(火曜日)まで、生涯学習センター(流山エルズ)で、本市初の名誉市民である日本画家・後藤純男氏の回顧展が開催されています。回顧展初日の1月22日(日曜日)は、後藤純男美術館館長・行定俊文さんをはじめ井崎市長や海老原市議会議長、後田教育長、市美術家協会の小堀事務局長、市文化協会の内会長、今回の回顧展で協賛いただいている株式会社三英の栗本さん、また後藤純男氏が名誉町民となっている松伏町より会田町長と佐藤町議会議長でテープカットを行い、回顧展のオープンを祝いました。オープニングセレモニーでは、井崎市長より式辞、海老原議長より祝辞が述べられ、後藤純男氏の奥様・恂子さんへ花束贈呈などが行われました。


花束贈呈の写真

 行定館長は後藤純男氏のご家族との話を交えながら、「どうぞ1回だけでなく、2回、3回と見に来ていただければ」とあいさつされました。この回顧展は、流山市の市制施行50周年を記念して、横幅約9メートルにもおよぶ大作「桜花浄苑雙図」や第71回院展で内閣総理大臣賞を受賞した「江南水路の朝」などの名作を中心に、32点の作品を展示した本格的なものです。「古都」「桜花」「北海道」「中国」「日本の風景」「日本画と書」の6つのテーマ別に、名作を間近で鑑賞できます。また、後藤純男氏と生前親交の深かった日野原重明医師(聖路加国際病院名誉院長)の書も展示されています。


講義をする行定館長の写真

 また、オープニングセレモニーに続いて、後藤純男美術館館長・行定俊文さんを講師に迎え「日本画の魅力を発見しよう!!」と題して講演会が行われました。当初は小・中学生を対象として企画されましたが、回顧展初日ということもあってか、参加を希望される大人の方も多くいらっしゃいました。「日本画は世界に誇る伝統芸術文化です。今日は学校では教わらない話をしましょう」と、後藤氏の作品を中心に、画材や道具などの実物を交えて、日本画の楽しみ方を話してくださいました。


岩絵具を見る子どもたちの写真

 日本画と油絵の大きな違いは2つあります。1つ目は「何に描くか」で、油絵は布(キャンバス)に描くのに対し、日本画は和紙を用います。後藤氏は越前和紙を好んで使っていたそうです。会場では実際に紙が配られ、子どもたちも和紙に触ってみて質感を感じているようでした。もう1つの違いは画材です。油絵では油絵の具を使いますが、日本画は岩絵具(いわえのぐ)を使用します。岩絵具は鉱物などを砕いたもので自然の色がそのまま活かされています。高価な材料が使われていることが多く「これはひと瓶で100万円くらいです」と紹介があると、会場からは驚きの声が上がっていました。材料が高価であるだけに、歴史の中においては富の象徴でもあったといいます。


後藤純男氏の絵を例に解説をする行定館長の写真

 後藤氏の作品の特徴についても解説があり、「十勝岳連峰」を例に「これらの横線は空気を表現していると考えられています。この技法を用いることで、北海道の寒さ・大地の広がり・自然の奥行きが感じられるでしょう。心象風景画であるとも言えます」との説明に、大きくうなずいている方もいらっしゃいました。また、友人を家に招いた際、食事の途中で絵の事が気になってアトリエに向かったというエピソードも紹介され、後藤氏の創作活動への情熱を窺い知ることができたのではないでしょうか。


参加者からの質問に答える館長の写真

 会場からは質問が寄せられ、「1枚の絵を描くのにどれくらい時間がかかりますか」という問いには「例えば、今回会場に展示されている桜花浄苑雙図は、描き始めてから飾るようになるまで4~5年でしょうか。10年かかったものもあります。絵の具をのせて、一晩おいて乾かしてを繰り返します。一つの作品だけに取り組んでいるのではなく、他の作品と並行して制作します」とのお話がありました。また、「日本画を鑑賞するポイントを教えてください」との質問には、「岩絵具は鉱物ですから、自然の色がそのまま表れています。違和感なく風景を見られるというところが味わいではないでしょうか」と説明がありました。


画材や道具を見ながら後藤純男氏の絵を鑑賞する親子の写真

 行定館長のお話を通じて、会場の皆さんも日本画の魅力や後藤さんの作品の奥深さを感じているようでした。アンケートには「一生のうちに絵を8,000枚も描いたなんてすごいと思いました」「今までなじみのなかった日本画が少し身近に感じられました。ただ絵を見るのと、日本画の知識を持って見るのはかなり違うと思いました」などのコメントが寄せられました。


展示スペースの幅いっぱいの大作を鑑賞する来場者の写真

 後藤純男氏は、1981年(昭和56年)にネスカフェゴールドブレンドの有名なシリーズCM「違いがわかる男」でご存知の方も多いのではないでしょうか。今日の日本画壇を代表する画家・後藤純男氏は、緻密にして豊か、心揺さぶる幽玄な作品を数多く世に送り出し、国内外・世代問わず高い人気を誇っています。回顧展は2月21日(火曜日)まで、時間は9時~21時(2月15日は休館)。会場の生涯学習センター(流山エルズ)へはTX流山セントラルパーク駅から徒歩3分。入場料は一般500円、団体(5名以上)および高校生(要学生証提示)400円、中学生以下・障害者手帳をお持ちの方および介助者1人は無料です。お問い合わせは生涯学習課(電話04-7150-6106)へ。


絵画を鑑賞する来場者の写真

【後藤純男氏の略歴】
昭和5年に当時の東葛飾郡関宿町(現・野田市)に生まれ、昭和21年に山本丘人に師事。昭和24年、山本丘人の紹介で田中青坪に師事。昭和27年、再興第37回院展で「風景」が初入選。昭和37年、再興第47回院展で「懸崖」が奨励賞・白寿賞・G賞受賞。流山市(当時:流山町)に転居。昭和40年、再興第50回院展で「寂韻」が日本美術院賞・大観賞受賞。昭和44年、再興第54回院展で「淙想」が日本美術院賞・大観賞受賞。昭和51年、再興第61回院展で「仲秋」が文部大臣賞受賞。昭和57年、中国・西安美術学院名誉教授となる。昭和61年、再興第71回院展で「江南水路の朝」が内閣総理大臣賞受賞。昭和63年、東京藝術大学・美術学部教授となる。平成9年、東京藝術大学を退官。北海道上富良野町に「後藤純男美術館」を開設。平成18年、春の叙勲にて旭日小綬章を受章。平成28年、大作「大和の雪」で、第72回日本芸術院賞・恩賜賞を受賞。流山市名誉市民第1号、東京藝術大学名誉教授、日本美術院同人、中国・西安美術学院名誉教授となる。10月18日逝去。
 


関連リンク

このページに関するお問い合わせ

ぐるっと流山に関するお問い合わせは、担当課のページからお問い合わせください。
担当課のページ