ぐるっと流山 鰭ケ崎おびしゃ行事

ページ番号20139 更新日 平成20年1月21日

矢に願い込め、鬼を射る 鰭ケ崎のおびしゃ行事

縁起物の鶴亀

 1月20日(日曜日)、鰭ケ崎の雷(いかづち)神社で市指定無形文化財のおびしゃ行事が行われ、降雪が予報されるほど寒い天候の中、多くの見学者が訪れました。「おびしゃ」という名前は弓を射る「歩射(ぶしゃ)」からきていると言われています。流山をはじめ利根川の流域に広く見られる正月行事です。流山では、戦前までは地区ごとに土地の産土様の神社を中心にどこでも行われていました。鰭ケ崎おびしゃ行事は、江戸時代の享保年間(1716~36年)から行われていると言われていて、都市化が進む中にあっても曜日に関係なく毎年1月20日に続けられています。


トウ渡し

 午後3時、雷神社にことしの当番と、来年の当番、神社の役員の皆さんなどが集り、太鼓の音を合図に宇佐美進さんの進行で古谷和史神主による神事や、社殿の中で七福神に扮装したことしの当番から、7人の裃姿の来年の当番へと杯を交わし、やり方や名簿などが記された帳面が手渡され、「トウ渡し」という当番の引き継ぎが行われました。


鬼の的を狙って

 当番の中でも中心となる「初戸(はなと)」と呼ばれる家が中心になり、この日までの初戸である宇佐美邦夫さん宅から翌21日からの「受け戸」である洞下忠夫さん宅へと引き継がれました。鰭ケ崎のおびしゃは、昭和52年に市指定無形民俗文化財となり、平成6年には県の同文化財に選択されています。


井崎市長が見事に的を射ぬきました

 これが無事に終ると、いよいよ「的撃ち」。神社の社殿前から鳥居の方向に立てられた赤鬼、青鬼が描かれた的に向かって矢を射るものです。赤や青の鬼の的も、弓矢もすべて手づくり。もとは1年の占いの行事ではなかったかと言われています。井崎市長や鈴木教育長らも挑戦。放った矢が的を射抜くと「おー、やったぁ!」という歓声が上がり、拍手が送られました。


多くのカメラマンがシャッターチャンスを狙って

 おびしゃには、どこにも当番があり、昔は当番の家の人が他の人たちにご馳走を振舞うという側面も強かったようです。鰭ケ崎でも、かつては「備社田」という神社所有の田圃があって、当番が1年間、この田を耕作して、その収穫から行事を行い、ご馳走を地域の人たちに振舞ったといわれています。備社田で収穫した米や野菜を供え物として「五穀豊穣」や「家内安全」、「商売繁盛」を祈願する講であったといわれています。


よーく的を狙って

 現在は備社田の耕作もなく、神社護持会からの助成金をはじめ当番者の負担金、市の補助金などで運営されています。その後、直会(なおらい)という神様に上げたものを皆でいただく宴会のようなものが宇佐見憲雄さんの司会で進行。山崎太郎同護持会顧問の乾杯で和やかに始まりました。地元の自治会や神社、事業所などからバナナやお酒が届けられ地域ぐるみの行事です。


獅子舞やお神楽

 あいさつに立った鰭ケ崎おびしゃ保存会の渡辺繁会長は、「若い参加者が多くなって、伝統行事を後世に伝えるためにも心強い」と参加者に呼び掛けました。会場には、「鶴亀」というおめでたい飾り物が置かれます。松の盆栽と、そこに大根の胴体に流山名産のネギで首をつけた鶴、聖護院大根という丸い大根を半分にしてゴボウで頭をつくった亀を一緒に飾ります。お正月の顔合わせという性格もあったおびしゃには、こうした縁起物の飾りが付き物のようです。鶴亀の隣に飾られた茶釜には「安政六年 鰭ケ崎」の文字が彫られていました。


賑やかに直会が

 宴もたけなわになった頃、赤城保存会のお囃子にのって獅子舞やお神楽が舞いました。かつては、地域の人や子どもたちによって伝承されていましたが、今は、赤城保存会によって行われています。「たねがし」という狐と田吾作の種まきのおめでたいお神楽などが披露され、ことしは、20日が日曜日ということもあり、多くの写真愛好家や郷土史研究家らが場所を取り合うようにして撮影していました。現在は、当番や役員が中心ですが、昔は地域の人は子どもからお年寄りまでだれでも参加していました。現在は、90軒ほどの昔からの氏子がおびしゃ保存会をつくって続けています。


おくりこみ

 直会も終わり、夜になると「おくりこみ」が行われました。花で飾った灯篭を先頭に恵比寿様や大黒様など七福神が万灯や提灯を手に行列をつくって行進します。いまは軽トラックに飾りつけた花自動車ですが、昔は台八車、荷車、牛車だったそうです。現在は使われることはありませんが、かつて、「どぶろく」を作っていた樽や味噌樽などおびしゃに使う道具等を乗せて、「受け当番」となる来年の当番の家々の中で、初戸(はなと)となる洞下忠夫さん宅まで送って行きました。


おくりこみ行列

 交通安全協会鰭ケ崎支部(小堀登支部長)と流山警察署が交差点などを守る中、「うぉー」と声を掛け合い、沿道の人々にみかんを配りながらの移動。交差点では車を止めての行進です。小堀支部長は「仕事で忙しかった時代に、子どもたちを交通事故から守ってもらったので、恩返しのつもりで活動しています。こうした伝統行事や地域の行事に関われるのはうれしい」と語ってくださいました。新しい初戸のお宅でもまた杯を交わし、七福神の衣装を引き継いで鰭ケ崎のおびしゃ行事は、ことしも無事終了しました。受け当番となった7軒では、来年のおびしゃ行事をはじめ1月、5月、9月、10月に行う「おこもり」の賄いなどの行事を1年間仕切っていきます。


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