ぐるっと流山 いきものジャパン・サミット

ページ番号7055 更新日 平成22年8月2日

先進自治体が集まり「いきものジャパン・サミット」 市民・学生など250人が参加し、サミット宣言も

いきものジャパン・サミット

 「生物多様性」という言葉をご存じでしょうか。生物多様性とは、さまざまな生命が豊かに存在している状態のことです。数え切れないほどの生物種が、それぞれの環境に応じた相互の関係を築きながら多様な生態系を形成し、地球環境と私たちの暮らしを支えてくれています。
 ことしは国際生物多様性年で、さらに10月には我が国で生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されるという動きのある年です。それぞれの地域で地域戦略の策定が進んでいるなか、先進的にこれに取り組んでいる自治体が集まって、連携・交流・ネットワークづくりを目指したサミット「いきものジャパン・サミット~生物多様性地位戦略をすすめる自治体サミット~」が、江戸川大学で開催されました。


千葉県環境生活部 森茂部長

 このサミットは、流山市・生物多様性シンポジウム実行委員会が主催し、千葉県・江戸川大学・江戸川大学総合福祉専門学校の共催、環境省の後援を受けて開催されました。地球温暖化の問題は、昨今メジャーな話題となっていますが、生物多様性についてはそのような状況ではありません。井崎市長はこの点について、「多様性と温暖化問題は車の両輪のようなもの。両方に取り組んでいくことが大切」とあいさつしました。続いて環境省・黒田大三郎参与は「パネルディスカッションでは熱い討議ができれば」との意気込みを語られ、また千葉県環境生活部・森茂部長からは「ようこそ千葉へ!」と千葉県の地勢の解説があり、サミットは開幕しました。


筑波大学大学院 吉田准教授

〈基調講演〉
 筑波大学大学院准教授・吉田正人氏による「今、なぜ、生物多様性なのか」。国際自然保護連合日本委員会会長、生物多様性条約市民ネットワーク共同代表でもある吉田准教授から、温暖化と生物多様性の関連、地球上の生物の現状などが、興味深い図表を用いて説明されます。多様性には、「種の多様性」だけではなく、「種内の多様性」という概念もあります。たとえば、東日本のゲンジボタルは4秒、西日本のそれは2秒間隔で光ることが知られていますが、これらが交雑してしまうと3秒間隔で光るホタルが生まれてしまうそうです。これは”多様”とは言わず、山などの自然の境界に阻まれ、東西で独自の進化を遂げる途中段階が阻害されていると捉えられるそうです。ほかにも、日本の里山の持つ生態系保全機能など、興味深い話題が続きました。


環境省 黒田大三郎参与

〈基調講演〉
 環境省・黒田大三郎参与による「生物多様性の世界の動向と我が国の取り組み」。世界の生物がどのような危機的状況にあるか、また、生物多様性をとりまく国際社会での法整備の状況なども紹介されました。国際社会では、日本の提言が色々と受け入れられているそうです。たとえば、生物多様性の復活シナリオは日本が提案し各国に受け入れられているほか、ポスト平成22年目標(平成22年目標が実現できなかったため次に目指すべき目標)の”ビジョン”はほとんど日本の提案のまま採用される見込み(案段階)だそうです。このうち日本が提案した「復活シナリオ」では、2050年には、生物多様性の状態を現状以上に豊かなものとする、という目標が掲げられています。講演の最後には、”わたしたちができること”の具体的な行動リストが、「ふれよう・守ろう・伝えよう」という3つの柱で分かりやすく紹介されました。


各自治体から講演

〈講演〉
 「自治体経営における生物多様性の重要性について」 北九州環境局・松岡俊和理事、土野守高山市長、井崎市長(講演順)から、それぞれの自治体での取り組みなどが紹介されました。


北九州環境局 松岡俊和理事

 北九州市は、環境先進市として知られています。松岡理事は、保全・育成など様々な取り組みの中でも、曽根東小の児童が曽根干潟で野鳥の調査やクリーン活動を行っている事例が印象的だと語られました。それは、この体験をしている児童たちの目の輝きの強さやあいさつの清々しさのためだそうです。実際に子どもたちの活動を見ていて、「生物と触れ合うことが人間性を育てる」ということを実感されたそうです。また、産業用地の中に緑地を作る「緑の回廊づくり」など、アイディアを凝らした取り組みはパワーを感じるものばかりでした。


土野守高山市長

〈講演〉
 土野守高山市長からは、「日本一豊かな日本一大きな高山市」と題しての講演をいただきました。冒頭、平均標高が40メートルの平坦な千葉県に対して、高山市では一番低い所でも海抜400メートルを超えているとのお話で笑いを誘う場面もありながら、豊かな自然の美しいスライドとともに講演が進みました。高山市は、市域の92.5%もの面積を森林が占めるとのことで、昔から豊かな自然の恵みを活かしながら人々が生活してきたことも紹介されました。高山市は、岐阜県内で初となる「生物多様性ひだたかやま戦略」を策定しています。”ひだ”と付いている理由は、市域にこだわらず、飛騨地方全体で取り組んでゆくべき問題であるとの理念からだそうです。この戦略の指針では、「土地本来」すなわち「高山らしさ」のある生物多様性を保全・再生することが挙げられ、推進されているところです。


井崎義治流山市長

〈講演〉
 井崎義治流山市長からは、森のまちを創出する2つの戦略「流山グリーンチェーン戦略」「生物多様性ながれやま戦略」が紹介されました。一定の緑化を行った住宅・事業所などに対する認定制度により、ヒートアイランドを抑制する街づくりをしながら、緑を社会的価値や経済的価値に変換していこうというグリーンチェーン戦略。平成18年から昨年までの4年間で認定戸数は約2,000戸という広まりを見せていることが紹介されました。また、これからの市の顔の一つともいえる市野谷の森(おおたかの森)については、「オオタカは本当に住んでいるの?」という疑問が市内外から多く寄せられたときのエピソードも紹介されました。おおたかの森近くに同名の駅が開業して半年後、なんとオオタカが駅舎に迷い込んできて、自ら存在証明をしたというニュースです。


UR都市再生機構 安井勝史所長

〈講演〉
 UR都市再生機構千葉常磐開発事務所・安井勝史所長からは「地域における生物多様性保全の取り組み事例について」と題し、大規模開発における環境保全の取り組みを説明いただきました。流山での新市街地開発では、ミティゲーション手法という方法を取り入れ、市野谷調整池の生態系を保全しながら作業している様子が紹介されました。これは、元あった調整池の工事をする際に、代替となる池を用意し、生物をそちらに移植したのちに工事をすることで元いた生物を守るという方法です。また同様におおたかの森周辺の開発で移転することとなった小山小の桜の移植に成功したことも、写真で紹介されました。


パネルディスカッション

〈パネルディスカッション〉
 吉田准教授、北九州市、高山市、流山市をパネリストに、江戸川大学総合福祉専門学校・惠小百合校長の司会で「生物多様性地域戦略の策定と取り組みについて」をテーマに行われました。松岡局長からは、「取り組みを広めるためには伝え方も工夫しなければ」との示唆、土野市長は「流域というつながりでの連携をはじめている。高山は神通川で繋がった富山湾沿岸の市民と交流・協力している」という事例を話していただきました。また吉田准教授からは「悲壮な思いでやっても続かない、元気に取り組もう」、井崎市長からは「街中における緑を"アクセサリ"でなく"社会インフラ"と捉える思考転換を」との提言がありました。


いきものジャパン・サミット宣言

 最後に、松岡理事、土野高山市長、井崎流山市長が「いきものジャパン・サミット宣言」を宣言し、次回サミット開催地を高山市と定めて閉会となりました。環境問題に興味があって参加したという江戸川大学ライフデザイン学科4年生の松浦さんは、「他の地域の取り組みが興味深かった。特に、北九州は地理的にも遠く、自然環境を見るだけでも面白かった」と感想を話していました。
 今後は、10月16日に子どもたちや親子を対象としたシンポジウム「ビオキッズ10~いきものわいわい流山子ども会議」を流山市で開催する予定です。ぜひご参加ください。


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