ぐるっと流山 佐野眞一氏の公開講演会

ページ番号14973 更新日 平成21年7月6日

市内在住のノンフィクション作家佐野眞一氏の公開講演会 平成の今を生きる800人の聴衆に現代社会への警鐘とエール

講演する佐野さん

 7月4日土曜日、文化会館で、市内在住のノンフィクション作家・佐野眞一さんを招いての講演会「平成論」が行われました。この講演会は、流山市ゆうゆう大学の公開講演会として行われたもので、一般の方も多数来場し、文化会館の800人ホールがほぼ満席になるほどの盛況でした。地道な取材の中での、政治家や皇室から見る家族論に始まり、戦後の政治や国際関係、昭和の終焉と同時に始まった国内の混乱など、講演内容は多岐にわたり、佐野氏の人間性を感じられる講演に、1時間半の講演会も皆さん、真剣な表情で聴き入っていました。


満席の会場

 佐野氏は、国内の自殺者が年間3万人を超えていることに触れ、阪神淡路大震災の死者が6,000人であることを考えると、日本の現状はある意味内戦状態のようなものであると憂慮。また、インターネットの普及により、現代人は物事を読む力が大きく減退している。読む力とは、活字を読む力にとどまらず、危険を読む力、人間の心を読む力にもつながり、この読む力の減退が日本の大きな損失となっていると警鐘を鳴らしました。


講演する佐野さん

 歴史学者のE・H・カーは、歴史とは何かと問われて、「現代の光を過去にあて、過去の光で現代を見ることだ」と答えていることに触れ、昭和という時代を旧満州や沖縄の戦後史などから紐解き、平成元年に亡くなられた経済人や文化人を挙げながら「大きな物語が終わった」のではないかと解説されました。また、佐野氏のライフワークとも言える民俗学者の宮本常一が「記憶されたものだけが記録にとどめられる」と述べていることにも言及し、すでに21年目を迎えている平成という現代を書きとめておくことの重要性を訴えました。


講演する佐野さん

 この宮本常一の名著「忘れられた日本人」からタイトルをとった「新忘れられた日本人」は、現在、サンデー毎日に好評連載中ですが、その一部を収録した同名の新刊が今月20日頃書店に並ぶ予定です。また、今回の講演テーマである「平成論」は、文藝春秋に2月から5月まで連載された昭和の終わりから平成についてのドキュメントをモチーフに企画したものですが、この連載については、追加取材や加筆をして10月頃の出版予定だということです。


講演する佐野さん

 佐野氏は、「旅する巨人─宮本常一と渋沢敬三」で大宅壮一ノンフィクション賞。「巨怪伝─正力松太郎と影武者たちの一世紀」、「カリスマ─中内功とダイエーの『戦後』」 、「東電OL殺人事件」、「凡宰伝」、「だれが『本』を殺すのか」、「てっぺん野郎─本人も知らなかった石原慎太郎」、「小泉政権-非情の歳月」、「阿片王 満州の夜と霧」、「甘粕正彦 乱心の曠野」、「沖縄─だれにも書かれたくなかった戦後史」など著書多数。NHK「課外授業~ようこそ先輩」、「クローズアップ現代」、「市民教養講座」などにも出演されています。


講演後サイン会も実施

 「団塊の世代という言い方は好きではないが、私たちこの世代の人間が、経験や能力を活かさずにただ老いていくのは、あまりにもったいない。リタイアした後の時間を趣味だけに生きるのではなく、それぞれが持っている知識やスキルを十分に活かし、次の世代の人間に何かを伝えられるようであって欲しい。今まさに歴史を生きている自分というものを常に認識していて欲しい」と参加者にエールを送りました。


100人以上がサインを求めて

 講演終了後行われたサイン会には、100人以上の方が列を作りました。2歳の娘さん・穂花ちゃんを連れて、南流山からお越しになった吉田有人さん親子は、奥さんが広報で講演会を知り、有人さんがぜひにと親子で参加。吉田さんは「東電OL殺人事件を始め、佐野氏の作品はノンフィクションならではの興味深いものばかり。佐野氏の生の声を聴くことができて、色々な意味で有意義な講演会でした」と話してくださいました。


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