ぐるっと流山 鰭ケ崎おびしゃ行事

ページ番号13123 更新日 平成22年1月21日

鬼を祓う紅白の矢 市指定無形民俗文化財「鰭ヶ崎おびしゃ行事」

手作りの弓と矢で

 1月20日、鰭ヶ崎の雷神社で「鰭ヶ崎おびしゃ行事」が行われました。この行事は、かつては1年の当番7人が耕作した備社田(神社が所有する田んぼ)で収穫された米や野菜を奉納し、五穀豊穣や家内安全を祈願する行事でした。現在では、備社田の耕作はありませんが、祝詞奏上、玉串奉天、トウ渡し、的撃ち、直会(なおらい)、送り込みなどの一連の儀式が江戸時代の享保年間(1716年)から脈々と受け継がれ行われており、昭和52年には市内初の市指定無形民俗文化財に、平成6年には県の記録選択文化財となっています。


神社の境内

 「おびしゃ」は弓を射る「歩射(ぶしゃ)」からきていると言われる、利根川流域で多く見られる正月行事です。鰭ヶ崎のおびしゃは、多くの行事が土日に行われるようになっている中、曜日に関係なく毎年必ず1月20日に行われています。両側をマンションに囲まれ、住宅地の中にひっそりとたたずむ会場の雷神社。午後2時半には、カメラを持った一般の見物客が集まりだし、儀式が始まる3時には100人以上の観客が境内を埋めました。


今年の当番は七福神に扮して

 今年は、初めての試みとして、行事の前に鰭ヶ崎小学校に七福神が出向く特別授業も行われました。おびしゃ保存会の皆さんのはからいで実現したもので、体育館に集まった3・4年生約200人が、面をつけた七福神が現れると歓声をあげて喜びました。「おびしゃ行事」や七福神の説明、児童からの質問の時間もありました。子どもたちの「弓はどうして手作りなの?」「なんで弓を射るようになったの?」との質問に、おびしゃ保存会の恩田一雄会長は「かつては備社田の耕作など、地域での共同作業がたくさんありましたが、現在はそうしたものも減ってきています。当番が一緒に作業をする機会の一つとして今も手作りを続けています」と説明しました。


社殿内で厳粛な神事で

 最後には、七福神の皆さんが児童から握手を求められるなど、児童にも人気の七福神でした。おびしゃ保存会の宇佐見憲雄副会長は「地元の伝統行事を子どもたちに知ってもらういい機会をいただけました。これからも次の世代に引き継げるよう、毎年続けていきたいですね。来年は、お囃子の皆さんにも参加していただいて、子どもたちがもっと楽しんで地域の行事に興味を持てるようにしていきたい」と話してくださいました。


新旧の当番が引き継ぎ

 社殿では、諏訪神社の古谷宮司による祝詞奏上や玉串奉天から始まり、続いて、新旧の7人の当番が引き継ぎを行う「トウ渡し」の儀式。色鮮やかな衣装を身にまとった旧当番の七福神と、裃に身を包んだ新当番が向かい合い、神酒を酌み交わして引き継ぎを行います。当番の中心となる「初戸(ハナト)」は、秋元厳さんから染谷吉輝さんへと引き継がれました。今年は、裃と七福神の面も新調し、特に面は、氏子相談役の山崎太郎さんの実弟、山崎政幸さんの手作りにより奉納されたもの。今年は、木彫りの3種の面が奉納され、今後も少しずつ彫っていただけるということです


鬼の面に向かって矢を射ます

 そしていよいよ儀式の最大の見所でもある「的撃ち」の始まり。100人を超える観客が見守る中、拝殿から鳥居の方向へ5メートルほどの距離に立てられた赤鬼・青鬼の的を当番の皆さんが紅白の弓矢で射抜きます。鬼の的や弓矢も全て、当番の方々の手作りです。現在は鬼の絵は印刷ですが、かつては当番の方の手描きだったため毎年鬼の表情が変わっていて、これもなかなか味わい深かったといいます。


見事に的を射ぬきました

当日は、1年で最も寒さが厳しくなるという二十四節気の大寒に当たりましたが、千葉では最高気温16.5度が観測されるなど4月なみの暖かさでした。急な気温の上昇により風が強く吹いたためか、皆さんが放った矢はなかなか鬼を射止めることができません。井崎市長と鈴木教育長も的撃ちに挑戦し、2回目に井崎市長が放った矢が、見事、鬼の額を射抜くと、観衆から大きな歓声と拍手が起こりました。


直会の様子

 的撃ちが終わると会場を社務所に移して直会(なおらい)の始まりです。直会は、行事で奉納したものを皆で食べる宴会のようなもの。上座には、大根の胴にねぎの首を付けた鶴と、聖護院大根の体にゴボウの頭を付けた亀の飾りが置かれ、氏子の皆さん、新旧の当番が左右の席に分かれます。前年の初戸の秋元さんによる、神酒での乾杯で始まった直会。秋元さんは「1年間、無事に初戸を務め、次の当番に引き継げてほっとしています。昔から鰭ヶ崎はまとまりの強い地域。今後も行事の伝統を先の世代に繋いでいきたい」と話してくださいました。


獅子舞

 諏訪神社の古谷宮司は「今年は庚寅(かのえとら)。庚には改まるの意があり、寅には伸びるの意があります。今年は物事が良い方向へ進んでいく年となりますよう祈念いたします」と挨拶を行いました。宴が進むと、お囃子にのって獅子舞が登場。次々に投げ込まれるおひねりに、獅子の口におひねりを入れる氏子のおかみさん衆。最後には、獅子がくわえた掛け軸から「祝 無形民俗文化財 鰭ヶ崎おびしゃ」の文字が飛び出し、会場の盛り上がりは最高潮に。


お神楽「たねがし」

 このお囃子や獅子舞は、市内の祭りなどでお囃子や神楽を継承している赤城保存会の皆さんによるもの。獅子舞に続いては、狐と田吾作の神楽も披露され、会場の廊下からは、二十数人の一般の見物客が折り重なるように、カメラを差し込んで伝統行事をレンズに収めていました。今日の様子は、JCNコアラ葛飾も取材に訪れ、1月21日のデイリーニュースで放映されたほか、同社のホームページ「BBコアラ」でもご覧いただくことができます。


今年の当番と来年の当番が同時に

直会が終わると、「送り込み」と呼ばれる儀式が行われました。花で飾られた軽トラックに酒樽や味噌樽、おびしゃに使う道具などを乗せ、七福神や護持会の皆さんの先導で、新初戸の染谷さん宅へと、道具を引き継ぐ儀式です。染谷さん宅までの約1.5キロの道のりを、独特の掛け声をかけながらゆっくりゆっくり進んでいきました。こうして夜半まで続いた一連の儀式は幕を閉じ、新しい7人の当番は年4回行われる「おこもり」や、分雷(わけいかづち)神社への代参など1年間のお務めを行い、来年の1月20日には、また七福神の姿を見せてくれます。


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