ぐるっと流山 ノンフィクション作家・佐野眞一講演会

ページ番号7504 更新日 平成23年8月22日

 ノンフィクション作家・佐野眞一講演会  最新作「津波と原発」を語る

写真について説明する佐野さんの写真

 8月21日(日曜日)、生涯学習センターで、市内在住のノンフィクション作家・佐野眞一さんを招いての講演会「津波と原発」が行われました。7月に同名で講談社から出版された最新作のため、大震災発生から1週間後に三陸入りし更に立ち入り禁止の福島第一原発近くを歩いた佐野さんが、一体そこで何を見てノンフィクション作家の第一人者としての鋭い感性で何を感じたかを語っていただけるとあって、雨模様のなか約500人の方々が市内外から来場されました。


防護服を着て原発近くの海岸線を歩く人の写真

 会場の生涯学習センターホールは定員300人です。同センターでは、開催近くになると多くの問い合わせがあったことから、定員オーバーを予想して会議室3室のパーテーションを外し大型スクリーンで会場の様子を映し、同様にロビーも開放しスクリーンを設置して佐野さんの講演を映像とともに聴いていただきました。今回の講演では、現地の写真や動画も会場内で映し出されたことから、別会場の皆さんも生涯学習センターによるスクリーン設置の配慮に感心されていました。


豚舎で死んでいる豚の写真

 講演ではまず、佐野さんが大震災の発生1週間後に三陸や原発近くを訪れた現場の写真がスクリーンに映し出され、1枚1枚の写真について、その時の状況や感じたことを話してくださいました。津波で壊滅した町の姿はテレビや雑誌で良く目にしましたが、原発近くで写したという、牛や豚が放置され餓死した牛舎や豚舎、飼い犬が野犬化しうろつく無人の街、満開の桜が咲き誇るだれもいない人里、佐野さんが評するに「まるで核戦争後のゴーストタウンのようだ」という、その異様さに会場は静まりました。


街道沿いに書かれたメッセージの写真

 さらに、双葉町で撮影したという「明るい未来のエネルギー」という看板と、街道沿いに「地元人 ヒバクなる」「国民ころすきか」と書かれた畳が立て掛けられている写真、電力が失われた原発から2キロの双葉町の街中で、東北電力圏内のため無人なのに点灯する信号など、映し出された写真に何か矛盾めいたものを感じた方も多かったと思います。また、佐野さんが現地に持参した放射線量の簡易測定機では、一番高かった所で毎時72.97マイクロシーベルトを示したという事実に驚かされるとともに、防護服を着ているとはいえ、そうした現場に足を踏み入れる佐野さんのジャーナリズムにも、感に堪えません。


満席の会場の写真

 写真の後は動画も映し出され、さらに現場の悲惨さが生々しく感じられました。佐野さんは、阪神淡路大震災の時もニューヨークの同時多発テロの時も、いち早く現場に立っていらっしゃいましたが、大震災後の三陸と原発周辺の潸然たる風景は、その比ではないと語ります。本書でも書いている、宮古市の定置網の帝王と呼ばれた男の話を挙げ、6艘あった舟のうち5艘を流され途方に暮れて毎日酒びたりの彼が「私の前で、船貸してくれ・・・と泣くんです」と話し、家族を失った人ばかりでなく、もっといろんな目にあった人がいる。私たち日本人は、今回の震災を受けて言葉を失う体験をした人々の身の上を思いやる想像力を働かせなければならない」と訴えました。


講演する佐野さんの写真

 佐野さんは、東京都出身。早稲田大卒。平成9年に「旅する巨人─宮本常一と渋沢敬三」で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。さらに一昨年の平成21年には、「甘粕正彦 乱心の曠野」が講談社ノンフィクション賞を受賞しました。他にも、新証拠で再審となるかと話題になった「東電OL殺人事件」や「巨怪伝─正力松太郎と影武者たちの一世紀」、「カリスマ─中内功とダイエーの『戦後』」、「だれが『本』を殺すのか」など、多くの話題作、問題作があります。


著書にサインをする佐野さんの写真

 講演会終了後、最新作「津波と原発」の販売が行われ、買い求めいただいた方には、その場で佐野さんが本にサインをしていただけるとあって、多くの方が列を作りました。佐野さんのサイン本を手にうれしそうにされていた溝口英恵さんは、流山市民のお友だちに誘われて新松戸からいらっしゃったとのこと。「今日のお話を聞いて、今回の大震災の本当の怖さ、重大さが分かった気がします。でも、佐野さんのおっしゃる通り、目や耳に入るものに疑問を持ちながら、自分なりに震災のことを考えていかなければならないと思います」と語ってくださいました。


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