ぐるっと流山 鰭ケ崎おびしゃ行事

ページ番号14710 更新日 平成25年1月21日

鰭ケ崎おびしゃ行事

七福神の衣装で

 1月20日(日曜日)、江戸時代の享保年間(1716~36年)から続くと言われている「鰭ケ崎おびしゃ行事」が雷(いかづち)神社で行われました。赤鬼・青鬼の面をあしらった的に矢を射る伝統行事として、おびしゃ保存会(宇佐見憲雄会長)により運営され今に引き継がれています。多くの行事が、土・日曜などの休日に行われるようになっている中、このおびしゃ行事は曜日に関係なく毎年1月20日に続けられています。今回は、日曜日に当たり、いつもより多い約100人の見学者が訪れました。


鬼の的狙い

 「おびしゃ」は関東地方の新年行事で、名前は弓を射る「歩射(ぶしゃ)」からきていると言われており、とくに千葉県の利根川沿いの地域で多く、100か所以上で行われています。しかし、その多くは弓を射ることはなくなり、単に豊作や安全を祈ったり、地域の人たちが酒を酌み交わす場になっているところが増えています。そんな中、矢を射ることを世々引き継いできた鰭ケ崎のおびしゃ行事は大変貴重であり、流山市では昭和52年に市内初の無形民俗文化財に指定し、平成6年には千葉県の記録選択文化財にもなっています。


今年の当番

 社殿には、今年と来年の当番や、保存会の役員の皆さんなどが登殿しますが、今年の当番の7人は色鮮やかな七福神の衣装に身をまとい、来年の当番は袴姿となります。太鼓の音を合図に神前行事が開式され、諏訪神社の上田宮司により祝詞奏上や玉串奉天などが厳粛に執り行われました。次に、新旧の当番が向かい合い「トウ渡し」という当番の引き継ぎが行われました。当番は7軒で受け持ちますが、中でも筆頭となる「初戸(ハナト)」は、米本正良さん宅から富山正治さん宅へと引き継がれました。


次の当番

 氏子は81軒あるため、当番が回ってくるのに約11年、さらに7軒のうち1軒だけが初戸となります。当番は、おびしゃ行事のほかに、5月・9月・10月・翌年1月に実施される「おこもり」の賄いや茨城県にある分雷(わけいかづち)神社への代参など行います。新たな初戸となる富山さんは、「初戸が当たるのは大変名誉なことです。伝統を守っていくため、身を引き締め何事もなく無事に引き継げるよう1年間務めたい」と語っていました。


井崎市長も挑戦

 トウ渡しが終わると、いよいよ邪悪を退散させようという「的撃ち」。神社の拝殿から鳥居の方向約5メートルに立てられた、直系約50センチの的に向かって矢を射るものです。今年は矢を新調したことから、前評判ではたくさんの矢が当たるのでは、とのことでしたが、実際にはなかなか当たりません。来賓で参加していた井崎市長も挑戦しましたが、残念ながら外れてしまいました。神事の後の直会で、「流山の貴重な文化伝統が長く受け継がれ、そして広く知られるように引き続きご尽力ください」と挨拶しました。


七福神が的を狙い矢を射ます

 その後も、保存会の役員の皆さん、七福神や袴姿の新旧当番の皆さんが次々に的をめがけ矢を射ましたが、一向に当たりません。残り数人となったところで、保存会副会長の宇佐美進さんが、見事に赤鬼の面を射ぬき、境内に詰め掛けた見物客から大歓声と拍手が送られました。今年は結局、宇佐美さんが放った一矢だけしか当たりませんでしたが、天候にも恵まれ、また1年、大切な伝統行事が引き継がれました。南流山から見学にいらした今野栄樹さんは、「友だちに誘われてきましたが、近くで伝統あるおびしゃ行事が行われていたなんて知りませんでした。こうした行事は地域の宝ですね」とカメラのシャッターを盛んに切っていらっしゃいました。


保存会会長の宇佐見憲雄さん

 的撃ちが終わると、社務所に場所を移して直会が始まりました。直会は、神様に上げたものを皆でいただく宴会のようなものです。今年から保存会の会長を務める宇佐見憲雄さんは、「鰭ケ崎のおびしゃは、私たちの先人たちが約300年前から引き継いできた伝統ある行事です。時代の推移とともに形式は変わってきましたが、その神髄は継承できていると思います。今日の的打ちでは見事に青鬼の的が射抜かれ、家内安全、五穀豊穣、そして日本経済の再生復興につながる一矢になったのでは」と語りました。なお、この日、当番の七福神が持つ小道具や被り物などは、夢まるふぁんど委員会から受けた助成金で新たに購入したものだそうです。


赤城保存会の獅子舞

 宴もたけなわになった頃、赤城保存会の皆さんが、お囃子や獅子舞、お神楽を奉納してくださいました。次々に投げ込まれるおひねりを口にくわえる獅子に、会場は大きな笑い声で包まれました。さらに、狐と田吾作が種まきをするおめでたいお神楽「たねがし」なども披露され、多くの写真ファンや見物客がカメラに納めていました。赤城保存会は現在、会員は10人で、ボランティア活動のほか毎年6月から8月に行われる流山本町界隈のお祭りでお囃子などを奉納しています。


送り込み

 直会も終わり、夜になると「送り込み」が行われました。花で飾った万灯や提灯を持った七福神や保存会の役員が行列を作り、後には軽トラックに飾りつけた花自動車が、昔は振舞い用の「どぶろく」を作っていたという酒樽や味噌樽、おびしゃに使う道具などを積んで続きます。以前は、次の初戸の家に迎い引き継ぎを行いましたが、近年は住宅事情もあり社務所で行っているため、神社の周囲を一周して戻りました。道中、「送り込むだよー」という掛け声に気付いた沿道の家々の住民が、「ご苦労様です」と声をかけ拍手を送ります。


唯一、的を射ぬいた宇佐美さん

 今年、30人余りが挑戦して、ただ一人、見事に鬼の的を射ぬいた宇佐美進さんが、射抜いた的と一緒に記念撮影。「地域の皆さんの健康と幸せを願って矢を放ちました。だれも当たっていなかったので、うれしいというよりホッとしました。今年は良い年になりそうです。伝統行事は、一度途絶えると復活させるのは大変なので、一年一年しっかりと引き継いでいきたいですね」と笑顔で語ってくださいました。雷神社を入ると社殿に向かって右手には2つの大きな石碑があります。一つは昭和48年に神社新装建設の際に、もう一つは平成元年におびしゃ発祥300年を記念して建立されたものです。石に刻まれた文章を読むと、この神社には未来永劫この伝統行事が残されていくことが実感できました。ぜひ、皆さんもご一読を。


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