ぐるっと流山 鰭ヶ崎おびしゃ行事
七福神が鬼の顔の的に矢を放つ
令和7年1月19日(日曜日)、鰭ケ崎の雷神社で「鰭ヶ崎おびしゃ行事」が開催されました。
この行事は、五穀豊穣(ごこくほうじょう)、家内安全、無病息災を祈願するもので、千葉県北部と茨城県南部、埼玉県東部に多く見られる正月の伝統行事です。現在でも市内各所で行われており、中でも鰭ケ崎のおびしゃは、祝詞(のりと)奏上、玉串奉奠(たまぐしほうでん)、トウ渡し、歩射(ぶしゃ)、送り込み、直会(なおらい)などの一連の儀式が江戸時代中期の享保年間から受け継がれており、昭和52年より市の無形民俗文化財に指定されています。かつては1月20日に行われてきましたが、令和2年から1月の第3日曜に行われています。
拝殿では、諏訪神社の神官による祝詞奏上や玉串奉奠から始まり、続いて新旧7人の当番が引き継ぎを行う「トウ渡し」の儀式。色鮮やかな衣装を身にまとった旧当番の七福神と、裃(かみしも)に身を包んだ新当番が向かい合い、神酒を酌み交わして引き継ぎを行います。当番の中心となる「初戸(はなと)」は、岡本元子さんから米本誠章さんへと引き継がれました。
続いて、この行事の最大の見どころ「歩射」が始まります。新旧の当番が並んで鳥居側に据えられた赤鬼と青鬼の的に向かって拝殿から紅白の弓矢を放ちました。例年は2~3本ほどの命中とのことですが、今年は20本中9本の矢が見事的に命中。境内に集まった見物人約100人の方から大きな歓声が上がりました。かつては、鬼の的は当番の手描きで作られており、毎年変わる鬼の表情がなかなか味わい深かったといいます。
歩射のあとは「送り込み」です。送り込みは、おびしゃに使う道具などを七福神や護持会の皆さんの先導で、道具を引き継ぐ儀式です。七福神の皆さんが境内をぐるりと回ると、見物人にみかんなどが配られました。
社務所に戻ると「直会」が始まります。直会は、行事で奉納したものを皆さんで食べる宴会のようなもので、氏子の皆さん、新旧の当番が左右に分かれます。鰭ヶ崎おびしゃ行事保存会の会長・篠田茂男さんは「今年は矢が9本も当たり、幸先の良い結果で五穀豊穣間違いなし」と笑顔であいさつされました。
社務所の上座には、大根とねぎで作られた鶴と、聖護院大根を使って作られた亀が飾られていました。鶴亀の飾りも行事に欠かせないものですが、年々、農業を営む家が減る中で、野菜で鶴亀を作る技術の継承も難しくなっているそうです。
しばらくすると市無形文化財「流山の祭囃子、神楽等」の保持団体である赤城保存会によるお囃子と神楽が奉納されました。獅子舞が威勢よく座敷の中を舞うと、次々におひねりが投げ込まれ、列席者の頭を噛むなどして回ります。おひねりを獅子の口の中に放り込んだり、わざと遠くに投げてみたりと、獅子舞とのひょうきんな掛け合いを見せ、笑いを誘います。
次に披露した神楽は、狐と火男による「種貸し」です。狐の種まきを火男が邪魔する内容で、演者のひょうきんな動きに宴席は大爆笑。大いに盛り上がりました。直会が終わると、新旧の当番が並んで七福神の衣装を引き渡し、行事は無事に終わりました。
鰭ヶ崎おびしゃ行事は、おととしから当番を男性だけでなく女性もできるようにし、また、今年の当番には若手の方も顔を並べるなど、少しずつ変化を加えながら、江戸時代から続く地域の伝統行事として引き継がれています、今後、新しい7人の当番は年4回行われる「おこもり」など1年間のお務めを行い、来年の第3日曜1月18日に、また七福神の姿を見せてくれます。
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